UK不動産マーケット月次レポート:2026年9月号

対象データ:HPI 2026年7月分まで、民間賃料 2026年8月分まで、イングランド銀行9月MPC決定まで。発行日:2026年9月26日

Kens Estateより

9月のイギリス不動産市場では、住宅価格と賃料の動きがこれまで以上に明確に分かれてきました。住宅価格の年間成長率は3か月連続で減速し、季節調整後では2か月連続の下落となる一方、賃料は前年比3.8%まで上昇しています。

特に、North East と North West では価格と賃料の双方で相対的な強さが続く一方、ロンドンでは住宅価格の下落が再び拡大しています。市場全体としては、値上がり益よりも賃料収入の重要性が高まっている局面といえます。

また、住宅ローン承認件数の低下やインフレ見通しの上方修正など、資金調達環境には引き続き注意が必要です。一方、GBP/JPYは大きく円高方向へ動いており、円建てで英国不動産を検討される方にとっては、夏場と比べて取得条件が改善しています。Kens Estateでは、公的データをもとに、こうした市場の変化を整理してお届けします。


エグゼクティブサマリー

8月号以降、3つの点が大きく変化しました。これらを合わせると、本レポート・シリーズが記録してきたなかで最も明確な転換点を示しています。

価格の減速が続いています。UK年間住宅価格成長率は7月に+1.4%となり、6月の修正値+1.5%から低下、3ヶ月連続の減速となりました。月次では非調整ベースで+0.7%でしたが、季節調整後では−0.2%と、2ヶ月連続の下落です。ONSは、この減速の主因を South West の年間成長率の急低下とし、ロンドンと West Midlands も寄与したとしています。South West は−0.2%となり、ロンドンに続いてマイナス圏に入りました。

賃料は逆方向へ、明確に動きました。UK平均賃料は8月に月額£1,400へ上昇し、前年比+3.8%と2025年12月以来の高い年間成長率となりました。注目すべきは North East と North West がともに+5.8%で地域別トップに並んだこと、そしてロンドンが2025年10月以来最も強い賃料成長を記録したことです。賃料+3.8%と価格+1.4%の乖離は、本シリーズ最大の開きとなりました。

インフレと金利の状況は大きく悪化しました。8月のCPIは3.1%へ上昇し、MPCはインフレ率が2027年第1四半期に4%をやや上回る水準に達すると予測しています。7月時点の「2026年第4四半期に3.2%でピーク」から大幅な上方修正です。BoEは9月17日、2会合連続となる6対3の票決で政策金利を3.75%に据え置きましたが、付随する文言は明確でした。中東情勢が長期化し、セカンドラウンド効果のリスクが高まる場合、政策は引き締めが必要になる可能性が高い、というものです。委員会はまた、金融政策目的のギルト保有をゼロまで削減する複数年計画も採択しました。

今月、投資家が押さえるべき3つのポイント:

  1. インカムの論拠とキャピタルの論拠が完全に分離しました。賃料+3.8%に対し価格+1.4%、しかも季節調整後の価格は下落しています。利回り圧縮は反転し、トータルリターンは値上がりではなくインカムが支配する構図となりました。今後12ヶ月について意味のあるキャピタル成長を前提とするモデルをお持ちの投資家は、その前提をストレステストすべき局面です。
  2. 金利リスクは「いつ利下げか」から「利上げがあるか」へと移行しました。予測インフレのピークは2026年第4四半期の3.2%から2027年第1四半期の4%超へ移動し、11月5日会合には新たな金融政策レポートが伴います。7月の住宅ローン承認件数は56,100件と前年比−15%で、本シリーズ最弱の数値です。
  3. 円建て投資家にとっては大きく有利な動きがありました。GBP/JPYは9月8日の週に2026年安値の¥207.00を記録した後、¥208前後で落ち着いています。9月1日比で約4%安、7月中旬のピーク¥219.61からは約8%の低下です。本シリーズ開始以降、円建て購入者にとって最も意味のあるエントリー条件の改善といえます。

1. 価格動向:ヘッドラインとセグメント別

UK HPIは2026年7月時点で104.5(2023年1月=100)、UK平均住宅価格は£272,611となりました。年間インフレ率は6月の修正値+1.5%から+1.4%へ低下しました。月次では非季調ベースで+0.7%、季節調整後では−0.2%です。

非調整ベースの月次+0.7%は前年同期の+0.8%と比較してわずかな差であり、年間成長率は急落ではなく漸減しているといえます。基調を読むうえで重要なのは季節調整後の数値であり、こちらは2ヶ月連続でマイナスとなっています。

RICSは7月調査において、UK全体の住宅価格が引き続き中程度の下押し圧力に直面しており、特にロンドン、South West、South East で顕著であると報告する一方、ヘッドラインの価格指標がわずかながらマイナス幅を縮めつつあるとしています。

国別(カントリー)の動き

国平均価格月次変化年次変化
イングランド£293,479+0.7%+1.1%
ウェールズ£215,037+1.0%+2.6%
スコットランド£196,349+1.2%+2.3%
北アイルランド(2026 Q2)£202,487+2.1%+9.2%

イングランドは+1.1%となり、英国本土3カ国で最も弱い水準となりました。先月はウェールズと並んで+1.8%でした。ウェールズは+2.6%へ持ち直し、スコットランドは+2.3%を維持しています。北アイルランドの+9.2%は2022年第4四半期以来の高い年間成長率ですが、これは同地域にもイングランドと同様に適用されたSDLTの比較ベースを反映しています。

物件タイプ別:フラットのディスカウントが拡大

物件タイプ2026年7月2025年7月年次変化
戸建 (Detached)£444,936£437,752+1.6%
半戸建 (Semi-detached)£278,555£270,682+2.9%
テラスハウス£231,945£226,346+2.5%
フラット/メゾネット£192,704£197,534−2.4%
全体£272,611£268,843+1.4%

フラット・セグメントは−1.6%から−2.4%へ悪化し、最も好調な戸建タイプとの差は5.3%ptまで拡大しました。歪みのあった期間とクリーンな期間の4回の読み取りを通じて、フラットのディスカウントは一貫して4〜5%ptのレンジに収まっており、現在はそのレンジの上限にあります。投資家にとって、これは本シリーズで最も持続性のある構造的発見であり続けています。フラットは参入価格が最も低く、セクション3で示すとおり絶対賃料も最も低いため、その投資判断はキャピタル成長ではなく利回りの算術に依拠することになります。

バイヤー属性と資金属性

4カテゴリーすべてが収束を続け、+1.1〜+1.5%のレンジに収まっています。この圧縮は3ヶ月連続で継続しており、いずれの購入者セグメントも明確なアウトパフォームを示していないことを意味します。

新築 vs 既存

物件ステータス平均価格(2026年5月)月次変化年次変化
新築£369,759+4.4%+8.1%
既存物件£267,183+0.1%+2.7%

新築は+8.1%、既存は+2.7%と、大きなプレミアムに戻りました。先月は逆の関係を示していました。この系列は3号連続で方向が反転しており、サンプルサイズの小ささゆえに意思決定材料として信頼できないという8月号の指摘を裏付けています。サンプルが改善するまでは、ノイズとして扱うのが妥当です。


2. 地域別投資機会マップ

地域平均価格月次変化年次変化
North East£166,943+1.1%+4.9%
North West£221,445+1.0%+4.4%
Yorkshire and The Humber£209,116+1.3%+3.0%
East Midlands£242,274+1.7%+1.9%
West Midlands£250,880+0.5%+1.5%
East of England£337,518+0.5%+0.5%
South East£380,878+0.5%+0.2%
South West£302,298−0.2%−0.2%
ロンドン£550,037−0.1%−3.3%

Annual price change by region: 12 months to July 2026

Source: HM Land Registry UK HPI, July 2026 release. Third consecutive month of UK-wide deceleration.

Positive annual change Negative annual change
Northern Ireland +9.2%, North East +4.9%, North West +4.4%, Yorkshire and Humber +3.0%, Wales +2.6%, Scotland +2.3%, East Midlands +1.9%, West Midlands +1.5%, UK +1.4%, England +1.1%, East of England +0.5%, South East +0.2%, South West -0.2%, London -3.3%.

アロケーション上、重要なのは以下の3点です。

北部のリードは弱まるどころか強まりました。 North East は+4.3%から+4.9%へ加速し、North West は+4.4%を維持しています。この2地域はクリーンな読み取り3回連続でトップに位置しています。参入価格はそれぞれ£166,943と£221,445でイングランド最安水準を維持し、セクション3で示すとおり賃料インフレでも最上位を分け合っています。8月号では北部への投資判断がようやく歪みのないデータに基づくものになったと指摘しましたが、さらに1ヶ月の確認が加わり、この結論は強化されました。

ロンドンの下落は再開し、深化しました。 年間変化率は−2.5%から−3.3%へ悪化し、先月指摘した改善は反転しました。2024年1月以来、ロンドンにとって最も低い年間成長率です。11ヶ月連続の年間下落であり、Inner London が特に影響を受けています。ロンドンの平均価格は、2025年7月のピーク£569,000から£19,000低い水準となりました。8月号では2ヶ月連続でモメンタムが改善していると述べつつ、1ヶ月のプラスだけでトレンド確立とは言えないと注意喚起しました。この注意は妥当だったことになり、一時的な反転は定着しませんでした。

South West がマイナス圏に入りました。 年間−0.2%、月次−0.2%となり、South West はUKで2番目の下落地域となりました。ONSは、UK全体の減速の主因として South West の急低下を特定しています。South East の+0.2%、East of England の+0.5%と合わせると、イングランド南半分が横這いまたは下落という状況です。本シリーズが4月から追跡してきた南北の乖離は、現時点で最大幅となっています。


3. 賃貸市場:加速が広がる

ONSの民間賃貸価格指数(PIPR)によれば、UK平均月額賃料は2026年8月に£1,400、前年比+3.8%となりました。7月の+3.7%から加速し、2025年12月以来最も高い年間インフレ率です。ONSはこの上昇の一因をロンドンとしており、同地域は2025年10月以来最も高い賃料インフレを記録しました。

住宅価格+1.4%に対し賃料+3.8%であり、賃料成長率はキャピタル成長率の2.5倍を超えるペースとなっています。本シリーズ最大の乖離であり、不動産リターンの源泉における構造的なシフトを示しています。

国別賃料(2026年8月までの12ヶ月)

国月額平均賃料年次変化
イングランド£1,459+4.0%
ウェールズ£846+4.3%
スコットランド£1,013+1.1%
北アイルランド(2026年6月)£874+1.6%

イングランドは7月の+3.8%から上昇し、本シリーズではじめて4.0%を超えました。ウェールズは+4.5%から+4.3%へ小幅減速しましたが、トップを維持しています。スコットランドは+1.7%から+1.1%へさらに減速し、2023年8月のピーク+11.7%からの複数年にわたる減速が続いています。北アイルランドは+2.3%から+1.6%へ大きく低下しました。

スコットランドと北アイルランドには方法論上の留意点があります。ONSは、PIPRで使用するスコットランドの賃料データが歴史的に賃貸ストック全体ではなく主に募集中の新規物件であること、北アイルランドのデータも募集中の新規物件であることを指摘しています。国別比較にあたっては、相応の注意が必要です。

イングランド地域別の賃料成長率

North West が自身の前月水準を上回り North East と並んでトップに立った点は注目に値します。キャピタル成長で首位の2地域が、賃料成長でも首位という珍しいほど明快な一致が生じています。

Rent growth vs price growth by English region

Rent data to August 2026 (ONS PIPR), price data to July 2026 (UK HPI)

Rent annual % change Price annual % change
North East: rent +5.8%, price +4.9%. London: rent +3.6%, price -3.3%.

民間セクターのデータも方向性を裏付けていますが、水準は異なります。Zoopla の9月賃貸レポート(賃貸ストック全体ではなく新規契約を測定)は、7月までの1年間のUK賃料成長率を+2.6%とし、2月の底値+1.6%から上昇、2026年末までに+4〜5%に達すると予想しています。Zoopla はまた、募集中の賃貸住宅が前年比−3%、新規掲載の流入が−6%、1物件あたりの問い合わせが5.3件と約2年ぶりの高水準であることも報告しています。新規成約を追跡する HomeLet は、8月の賃料が前年比+4.1%としています。

3つの情報源に共通するテーマは供給制約です。Zoopla は、すべての地域でパンデミック前より募集中の賃貸住宅が少ないと指摘しています。投資家にとってこれは賃料収入の論拠を支えるものですが、同時に、家主の供給をさらに減少させる政策介入があれば効果が増幅されることも示唆しています。

参考グロス利回り

国別平均の単純グロス利回り(年間賃料 ÷ 平均住宅価格)は以下のとおりです。

国年間賃料平均価格グロス利回り
イングランド£17,508£293,4796.0%
ウェールズ£10,152£215,0374.7%
スコットランド£12,156£196,3496.2%
北アイルランド£10,488£202,4875.2%

Indicative gross rental yields by country

Annual rent divided by average price. Latest UK HPI and ONS PIPR data. Illustrative only.

Scotland 6.2%, England 6.0%, Northern Ireland 5.2%, Wales 4.7%.

イングランドは5.9%から上昇し、本シリーズではじめて6.0%を超えました。賃料が価格より速く上昇していることの機械的な帰結であり、現在の乖離が続けばヘッドライン利回りは改善を続けます。スコットランドは6.2%、ウェールズは4.7%、北アイルランドは5.2%で横這いです。

あくまで参考値です。実際の投資家利回りは、空室、管理費、SDLTサーチャージ、修繕積立、各国内のロケーションによって変わります。また、セクション5で説明する2027年4月からの不動産所得税率引き上げは反映されておらず、個人家主のネット利回りはこれにより低下します。


4. 取引件数と住宅ローン承認:本シリーズ最弱の数値

HMRCの月次不動産取引統計によれば、2026年7月の季節調整後住宅取引件数は97,000件で、前年同月比−1.1%、前月比−1.7%となりました。両方の比較がマイナスであり、いずれもベース効果の歪みから解放されています。

非季節調整ベースの6月から7月にかけては、イングランド+3.3%、スコットランド−3.9%、ウェールズ+5.8%、北アイルランド+3.1%となりました。

フォワード指標はさらに悪化しました。住宅購入向けの住宅ローン承認件数は、6月の58,200件から7月は56,100件へ減少し、6ヶ月平均60,800件を下回りました。承認件数は前年比−15%、前月比−4%です。本レポート・シリーズで記録された最も弱い承認件数であり、6ヶ月平均も直近3号で63,300件、61,400件、60,800件と低下を続けています。

投資家的読み方: 承認件数のトレンドは今月のデータで最も明確な先行シグナルであり、下向きを示しています。承認件数は完了件数に2〜3ヶ月先行するため、7月の数値は秋にかけて取引件数が弱含むことを示唆します。季節調整後の価格下落と10月28日の秋Budget接近と合わせると、買い手の交渉ポジションは維持され、さらに強まる可能性が高いといえます。年内に売却の必要がある売り手は、条件の改善を待つのではなく、それに応じた価格設定をすべき局面です。


5. 政策・金融政策・為替環境

政策:秋Budgetが焦点に

秋Budgetは2026年10月28日(水)に John Healey 財務相により実施されることが確定しました。日程は2026年7月31日に予算責任局(OBR)が確認しています。

すでに立法化済みで、Budgetに左右されない内容。 家主に影響する2つの変更が、財務相の発表内容にかかわらず法律で確定しています。2027年4月から、Finance Act 2026 に基づき不動産所得には22%、42%、47%という独立した所得税率が適用されます。個人家主にとって一律2%ptの引き上げです。法人家主は対象外です。2028年4月からは、通称マンションタックスである High Value Council Tax Surcharge が、£2百万以上の評価額を持つイングランドの住宅に適用されます。評価帯に応じて年額£2,500〜£7,500で、占有者ではなく所有者が負担し、カウンシルタックスと併せて徴収されます。

Making Tax Digital(所得税)も進行中です。不動産所得と自営業所得の合計が£50,000を超える家主は2026年4月から対象となり、閾値は2027年4月に£30,000、2028年4月に£20,000へ引き下げられます。法人家主は対象外です。

活発に議論されている内容。 不動産投資家にとって最も重要な検討中の項目は、マンションタックスの閾値です。The Times は、£2百万から£1.5百万への引き下げが財務省内で活発に議論されていると報じました。影響の推計は手法により異なります。The Times は、この変更により対象物件が現行閾値での推計134,000戸から約300,000戸近くまで増加すると報じています。Tax Policy Associates は2026年9月19日に更新したモデリングで、約123,000戸から約245,000戸への増加と推計し、新たに対象となる住宅のうち61,787戸がロンドン所在、全体の半数強を占めるとしています。同団体の試算モデルでは、£1.5百万のサーチャージ対象となるロンドンの物件は約144,104戸、ロンドン全体で年間約£624百万の負担額と推計されています。これらは政府予測ではなく独立した推計です。

サーチャージの設計に関する協議は2026年5月19日から7月14日まで実施され、政府は回答を検討中です。Valuation Office Agency は2026年から対象となりうる物件の評価を開始し、すでにカウンシルタックス区分F、G、Hにある住宅を中心に進めます。所有者への通知は2027年秋が見込まれ、2028年4月の徴収開始前に約6ヶ月の異議申立期間が確保される予定です。

キャピタルゲイン税(CGT)も憶測を集めている領域です。財務省が引き上げの可能性をモデリングしていると報じられています。住宅用不動産のCGTは2026/27年度において18%と24%、年間非課税枠£3,000であり、変更は確認されていません。

否定された内容。 The Times は、スタンプ・デューティとカウンシルタックスを不動産税または土地価値税に置き換える構想について、全国規模の再評価に時間がかかりすぎるとの理由から見送られると報じています。これは、8月号で報告した「今回のBudgetでスタンプ・デューティは変更しない」という首相の7月の発言と整合的です。追加物件への5%サーチャージおよび非英国居住者への2%サーチャージはいずれも維持されます。

この情報の受け止め方。 本レポートの読者の多くにとって重要なのはマンションタックスの閾値であり、それはロンドンに不釣り合いなほど大きく作用します。閾値が£1.5百万へ引き下げられた場合、新たに対象となる物件のおよそ半数が首都に所在し、すでに11ヶ月連続で下落している市場に年次の保有コストが加わることになります。それが重大かどうかは、投資家が価格帯のどこに位置するかによります。8月号で引用した2026年第1四半期の取引データでは、£1.5百万〜£2百万のイングランドの売買は四半期で約1,100件でしたので、対象となるストックは大きくてもフローは小さいといえます。

2027年4月の不動産所得税引き上げは、より広く該当する変更でありながら、注目度は低いといえます。すでに立法化されており、物件価格にかかわらずすべての個人家主に影響し、限界的にはグロス賃料収入のおよそ2%ptだけネット利回りを低下させます。セクション3の利回りをモデル化される投資家は、この点を調整してください。

本セクションのいかなる記述も、立法化の予測として、またいずれかの政策の是非についての見解として読まれるべきではありません。報道または憶測として記載した項目は、10月28日に財務相が確認するまで、まさにその段階にとどまります。

イングランド銀行(BoE)

MPCは2026年9月17日、6対3の票決でBank Rateを3.75%に据え置きました。6会合連続の据え置きです。Catherine Mann 氏、Megan Greene 氏、チーフエコノミストの Huw Pill 氏が、再び4.00%への即時25bp利上げに投票しました。Andrew Bailey 氏、Sarah Breeden 氏、Swati Dhingra 氏、Clare Lombardelli 氏、Dave Ramsden 氏、Alan Taylor 氏が据え置きに投票しています。

票の割れ方は7月と同じ6対3であり、本シリーズが4月から7月にかけて追跡した反対票の増加は、継続ではなく小休止した形です。変化したのは文言と予測です。

多数派は、金融環境が引き続きインフレを押し下げるとし、今会合での据え置きが適切と判断しました。ステートメントはそのうえで、ガイダンスを明確に鋭くする条件文を加えています。中東情勢が長期にわたり継続し、実際にそうなっているように見える場合、かつセカンドラウンド効果が生じるリスクが高まる場合、政策は引き締めが必要になる可能性が高い、というものです。

インフレ予測は大幅に上方修正されました。8月のCPIは3.1%へ上昇し、2%目標に対する1.1%ptの超過のうち約0.7%ptがエネルギー価格、主に自動車燃料に直接帰属するとされています。MPCは今後数四半期にわたりインフレがさらに上昇し、2027年第1四半期に4%をやや上回る水準に達すると予測しています。7月時点の中心予測は2026年第4四半期に約3.2%でのピークでした。水準と時期の両面で重大な上方修正です。

委員会はまた、金融政策目的で保有する英国国債の残高をゼロまで削減する複数年計画を全会一致で採択しました。残高は2034年末までに年平均£46bnのペースで圧縮され、年間£20bnの売却と償還到来分の組み合わせによります。紙幣発行の裏付けとして£120bnを留保した後、約£368bnが残存します。不動産投資家にとっての関連性は間接的ですが現実的です。複数年にわたるギルトの供給確定は、イールドカーブの長期ゾーンへの構造的な上昇圧力であり、スワップ金利および固定金利の住宅ローン価格に波及します。

次回決定は2026年11月5日で、新たな金融政策レポートを伴います。夏場にエネルギー価格が再上昇して以降はじめての本格的な予測改訂であり、方向転換が示唆される可能性が最も高い会合であるとの見方が示されています。2026年最後の決定は12月17日です。

住宅ローン市場への影響

インフレ予測の上方修正、明示的な引き締めガイダンス、複数年のギルト圧縮計画という組み合わせは、固定金利の住宅ローン価格について一方向を示しています。固定期間終了が近い借入者は、2026年前半に利用可能だった水準を上回る金利での借換を前提とし、11月会合を形式的な通過点ではなく実際のリスクとしてモデル化すべきです。

バイ・トゥ・レットについては、ストレス金利の上昇と2027年4月の所得税変更が複合的に作用します。想定金利の上昇によりインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)のテストが厳格化する一方、その債務返済に充てられる税引後収入は減少します。今後12ヶ月に借換を予定される投資家は、この2つを個別にではなく合わせて試算されることをお勧めします。

GBP/JPY

ポンドは対円で大きく下落し、本シリーズの4月から8月にかけて特徴的だった強さが反転しました。GBP/JPYは9月8日の週に2026年安値の¥207.00をつけた後、¥208.20前後で落ち着いています。9月1日比で約4%安です。9月中旬のインターバンク・レートは¥208.7前後、直近7日間のレンジは¥207.5〜¥208.7でした。30日前は¥215.70、90日前は¥213.18でした。

テクニカル面では、2月27日の安値を割り込み、夏場の天井形成パターンにおける¥209.20のネックラインを明確に下抜けました。日足RSIが26付近と売られ過ぎの水準にあり、方向性を必ずしも変えないまま戻りが入る可能性を示唆しています。

主たる要因は円側にあります。日本の金利見通しが強まり、USD/JPYは¥152.89と2月以来の円高水準まで低下しました。ポンド側が主導した動きではありません。

円建て投資家にとって、以下の点が重要となります。


6. 10月のウォッチポイント

来月号の注目点は次のとおりです。季節調整後の価格下落は3ヶ月目に入るでしょうか、そして South West の弱さは南部にさらに広がるでしょうか。住宅ローン承認件数の低下は続くのか、それが完了件数に表れるのはいつでしょうか。Budgetはマンションタックス閾値の引き下げを確定させるのか、そうであればプライム・ロンドンはどう反応するでしょうか。そしてイングランドの賃料加速は4%以上を維持するでしょうか。


出典・注意事項

  • 価格・取引件数: HM Land Registry UK House Price Index、2026年7月版(2026年9月16日公表、9月18日更新)。HPIはONSが算出し、HM Land Registry、Registers of Scotland、Land and Property Services Northern Ireland が原データを提供しています。
  • 賃料: ONS 民間賃貸価格指数(PIPR)、2026年9月発表分(2026年8月までのデータ、2026年9月16日公表)。補足的な賃貸市場の文脈として Zoopla Rental Market Report(2026年9月)および HomeLet Rental Index(2026年8月)。これらは賃貸ストック全体ではなく新規契約を測定しており、PIPRと直接比較できるものではありません。
  • インフレ: ONS 消費者物価指数ブルティン、2026年8月分。
  • 金融政策: BoE 金融政策サマリーおよび議事要旨(2026年9月16日終了会合)、Money and Credit統計(2026年7月)。
  • 取引件数: HMRC 月次不動産取引統計(2026年7月分)。
  • 政策・Budget: 予算責任局(OBR)によるBudget日程の確認、S&W Group および HomeOwners Alliance が引用する The Times の報道、Tax Policy Associates の2026年9月19日更新モデリング、立法化済みの不動産所得税率については Finance Act 2026。各項目は「立法化済み」「議論中」「否定済み」として明示しています。
  • 為替: 2026年9月25日時点のスポットレートおよび直近のヒストリカルデータ(Pound Sterling Live およびインターバンク・レート)。

直近月のHPIおよび賃料はいずれも速報値であり、後日改定される可能性があります。北アイルランドのHPIデータは四半期ベースで、同地域の賃料データは現時点で2026年6月分までしか利用できません。スコットランドおよび北アイルランドの賃料データは主に募集中の新規物件であり、イングランドおよびウェールズとの比較可能性には限界があります。新築価格の推計はサンプルサイズが小さいため不確実性が高く、3号連続で方向が反転しています。


免責事項

本記事は一般的な情報提供のみを目的として作成されており、投資、財務、法務、または税務に関する助言を構成するものではなく、また特定の物件、地域、金融商品の購入・売却・賃貸・投資を推奨または勧誘するものではありません。記事中の情報は、英国政府およびイングランド銀行の公式発表をはじめとする公開情報に基づき、公表時点において信頼できると考えられる情報源から作成されていますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。特に、UK House Price IndexおよびONS賃貸指数の直近データは速報値であり、後日改定される可能性があります。政治・政策動向に関する記述は公開情報として報じられた発言、提案、報道を反映したものであり、立法化の予測を示すものではなく、また特定の政治的立場を支持するものでもありません。政策影響に関する第三者のモデリングは公表されたものとして引用しており、政府予測を示すものではありません。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。不動産価格、賃料利回り、金利、税制(SDLT等の譲渡関連税制を含む)、為替レートは大きく変動する可能性があります。投資判断を行う際は、ご自身での十分な調査を行うとともに、必要に応じて独立した専門家(ファイナンシャル・アドバイザー、税理士、弁護士等)への相談をお勧めいたします。