エドワーディアン (Edwardian) | イギリスの建築スタイル
時代: 1901年から1914年
君主: エドワード7世
広義: 1901年から第一次世界大戦前まで
エドワーディアン時代は、1901年から1910年まで在位したエドワード7世に由来します。建築様式としては、第一次世界大戦が始まる1914年頃までを含めて扱われることが多く、後期にはネオ・ジョージアンやアーツ・アンド・クラフツの影響を受けた住宅が広く建てられました。
エドワーディアン様式は、先行するヴィクトリアン様式と比べて、より明るく、軽やかで、ゆとりのある住宅として理解できます。ヴィクトリアン期の濃密な装飾や重厚な内装から少し離れ、淡い色調、広い窓、明るい室内、庭とのつながりが重視されるようになりました。
この時代は短いものの、英国住宅史において非常に重要です。鉄道や路面電車の発達により、ロンドンをはじめとする都市の郊外化が進み、中産階級向けのセミデタッチド住宅やテラスハウス、広い庭を持つ住宅地が発展しました。現在のロンドン郊外で見られる、赤レンガ、白い木部装飾、広めの間口、明るい室内を持つ住宅の多くは、このエドワーディアン期の影響を受けています。
歴史・文化的背景
エドワーディアン期は、ヴィクトリア女王の長い治世が終わった後の、比較的楽観的で開放的な時代でした。英国は依然として大英帝国の中心にあり、都市には豊かさと消費文化が広がっていました。一方で、急速な工業化によって生まれたヴィクトリアン都市の過密、煙、衛生問題から離れ、より健康的で明るい住環境を求める意識も高まりました。
この流れの中で、郊外住宅地の開発が進みます。ロンドンでは、マズウェル・ヒル、クラウチ・エンド、イーリング、チズウィック、ウィンブルドン、ワンズワース、ハムステッド周辺などで、鉄道や路面電車の路線に沿って新しい住宅地が形成されました。
また、アーツ・アンド・クラフツ運動や田園都市運動も、この時代の住宅デザインに影響を与えました。1903年に始まったレッチワース・ガーデン・シティ、1907年から開発されたハムステッド・ガーデン・サバーブなどは、都市と自然の調和を目指す新しい住宅地の考え方を示しています。
公共建築や商業建築では、エドワーディアン・バロックと呼ばれる重厚な様式も見られました。石造風の外観、ドーム、円柱、ペディメントなどを用い、銀行、政府建築、市庁舎、商業施設などに格式と威厳を与えました。
建築的特徴
外観
- 赤レンガの外壁。白塗りの木部、漆喰、ペブルダッシュと組み合わせることが多い
- 白い木部装飾。窓枠、破風、ポーチ、ハーフティンバー部分に使われる
- 大きく明るい窓。ヴィクトリアン期よりも窓が大きく、室内に光を取り入れやすい
- 上部多分割サッシと下部一枚ガラス。エドワーディアン住宅によく見られる窓構成
- モック・チューダーのハーフティンバリング。破風や上階に装飾的な木組みを見せる
- 吊り瓦やペブルダッシュ仕上げ。上階壁面や破風周りに使われる
- ベイウィンドウ。ヴィクトリアン期より簡素で、より明るい印象
- ポーチ付きの玄関。木製ディテールやステンドグラスを伴うことが多い
- 広めの前庭と裏庭。ヴィクトリアン・テラスより敷地にゆとりがある
- 非対称のファサード。破風、屋根線、窓配置に変化を持たせる

住宅形式
エドワーディアン期の住宅は、テラスハウス、セミデタッチド住宅、郊外型ヴィラなどに見られます。ヴィクトリアン住宅よりも間口が広く、部屋も明るく、庭との関係が重視される傾向があります。
典型的なエドワーディアン住宅では、玄関ホールが広く、フロント・レセプションとリア・レセプションがあり、庭に面した居室が明るく設計されています。現代の住宅として見る場合も、間取り変更やキッチン拡張との相性がよく、ファミリー向け住宅として人気があります。
インテリアと装飾
エドワーディアンのインテリアは、ヴィクトリアン後期の重厚で密度の高い装飾から離れ、より明るく軽やかな方向へ変化しました。壁色は淡くなり、壁紙やコーニスも比較的控えめになります。
- 明るい壁色。クリーム、淡いグリーン、淡いブルーなど、軽い色調が好まれる
- 磨かれた板張り床とラグ。全面カーペットよりも、木の床にラグを敷く構成が多い
- シンプルなコーニスとシーリングローズ。装飾はあるが、ヴィクトリアン期より控えめ
- ステンドグラス。玄関扉や階段窓に、植物や幾何学模様を用いる
- アーツ・アンド・クラフツの影響。木材、手仕事感、植物モチーフ、造作家具など
- イングルヌック暖炉。暖炉周りをくつろぎの場として設計する例も見られる
- アール・ヌーヴォーの影響。曲線的な植物模様、孔雀やユリのモチーフなど


エドワーディアン住宅は、オリジナルの暖炉、ステンドグラス、木製建具が残っていると、物件としての魅力が高まります。一方で、現代の住まいとしては、キッチン、浴室、断熱、配線、暖房設備が更新されているかも重要な確認ポイントです。
物件識別のポイント
エドワーディアン物件の典型的特徴:
- ✓ 赤レンガと白い木部装飾の組み合わせ
- ✓ ヴィクトリアンより大きく明るい窓
- ✓ 上部多分割、下部一枚ガラスのサッシ窓
- ✓ 破風部分のモック・チューダー装飾
- ✓ 上階の吊り瓦またはペブルダッシュ仕上げ
- ✓ 木製ポーチとステンドグラス入り玄関扉
- ✓ ヴィクトリアンより広い前庭・裏庭
- ✓ 室内の広い玄関ホールと明るいレセプションルーム
- ✓ 装飾はあるが、ヴィクトリアンより軽やかで控えめ
混同されやすい時代: 後期ヴィクトリアン、戦間期住宅
エドワーディアン住宅は、後期ヴィクトリアンのクイーン・アン復興様式と重なる部分があります。赤レンガ、白い木部、破風、ステンドグラスなどが共通するためです。エドワーディアンの方が一般的には明るく、敷地にゆとりがあり、装飾がやや控えめです。
また、戦間期のセミデタッチド住宅とも混同されることがあります。戦間期住宅は、よりモック・チューダー色が強く、ペブルダッシュや寄棟屋根、ガレージや車道が目立つ傾向があります。エドワーディアン住宅は、それよりもやや古典的で、建具や内部ディテールに職人技が残っていることが多いです。
代表的事例
エドワーディアン様式は、ロンドン郊外や英国各地のガーデン・サバーブ、田園都市、公共建築に多く見られます。住宅では、広い窓、赤レンガ、白い木部、ステンドグラス、庭とのつながりが重要な特徴です。
ロンドンで住宅を探す際には、マズウェル・ヒル、クラウチ・エンド、イーリング、チズウィック、ウィンブルドン、ハムステッド、ワンズワースなどで、エドワーディアン期の住宅を見る機会があります。Kens Estateの視点では、エドワーディアン住宅は「時代物の雰囲気」と「現代生活への適応性」のバランスが取りやすい住宅タイプです。明るい室内、比較的広い間取り、庭とのつながりがあり、ファミリー向けにも人気があります。
住宅・都市住宅の代表例
- ハムステッド・ガーデン・サバーブ(ロンドン、1907年以降)、田園郊外住宅地の代表例
- レッチワース・ガーデン・シティ(ハートフォードシャー、1903年創設)、最初の田園都市
- マズウェル・ヒル、クラウチ・エンド、イーリングの住宅地(ロンドン)、エドワーディアン郊外住宅の代表的エリア
- チズウィック、ウィンブルドン、ワンズワースの住宅地(ロンドン)、広めの敷地を持つエドワーディアン住宅が見られるエリア
公共建築・関連建築の代表例
- アドミラルティ・アーチ(ロンドン、1910年)、エドワーディアン期の記念碑的建築
- セルフリッジズ百貨店(ロンドン、1909年)、大規模商業建築の代表例
- オールド・ベイリー(ロンドン、1907年)、エドワーディアン・バロックの公共建築
- メソジスト・セントラル・ホール(ロンドン、1912年)、重厚な公共建築の例
- カーディフ市庁舎(カーディフ、1906年)、エドワーディアン・バロックの代表例
掲載画像について
このページに掲載している画像は、建築様式や住まいの雰囲気を説明するための参考イメージです。当社で取り扱っている売買物件・賃貸物件の実際の写真、または特定の物件を示す画像ではありません。
その他の建築様式

ジョージアン Georgian
左右対称の外観と整然と並ぶ窓、高い天井が特徴。端正で均整の取れた英国住宅様式です。

リージェンシー Regency
白いスタッコ外壁や優雅な曲線、装飾的なバルコニーが特徴。ロンドンの上品な街並みを代表します。

ヴィクトリアン Victorian
レンガ造りの外壁、出窓、装飾的なディテールが特徴。現在も英国各地で多く見られる住宅です。

戦間期 Interwar
ベイウィンドウ、瓦屋根、前庭を備えた郊外住宅が中心。実用性とゆとりを重視した住宅です。

戦後 Post-war
住宅不足への対応から大量に建てられた、簡素で機能的な住宅。戸建てから集合住宅まで幅広く見られます。

モダン Modern
装飾を抑えた外観、開放的な間取り、大きな窓が特徴。機能性を重視した住宅デザインです。

コンテンポラリー Contemporary
現代の素材や設備、環境性能を取り入れた住宅。時代に合わせて進化するデザインが特徴です。