戦間期・インターワー (Interwar)
時代: 1918年から1939年
背景: 第一次世界大戦後から第二次世界大戦前まで
戦間期は、1918年の第一次世界大戦終結から1939年の第二次世界大戦勃発までの約20年間を指します。この時代は、住宅不足への対応、郊外開発の拡大、自動車利用の増加、そして新しい生活様式への期待が重なった時期でした。
英国住宅史において、戦間期は特に重要です。ロンドンをはじめとする都市の外側では、鉄道や地下鉄、路面電車の発達により、新しい郊外住宅地が急速に広がりました。いわゆる「1930年代セミ」と呼ばれるセミデタッチド住宅は、この時代を代表する住宅形式です。
様式的には非常に多様で、モック・チューダー、ネオ・ジョージアン、アール・デコ、ストリームライン・モダン、初期モダニズムなどが並存しました。郊外住宅では、ペブルダッシュ、赤い瓦屋根、ベイウィンドウ、ハーフティンバー風の破風、広い前庭と裏庭がよく見られます。一方で、映画館、工場、海辺の建築、集合住宅などでは、アール・デコや初期モダニズムの洗練されたデザインも現れました。
歴史・文化的背景
第一次世界大戦後、英国では住宅不足が大きな社会問題となりました。1918年のチューダー・ウォルターズ報告書は、公営住宅の広さ、採光、庭、配置などに関する新しい基準を示し、田園都市・田園郊外の考え方が住宅政策に取り入れられました。
1920年代から1930年代にかけて、ロンドン郊外では地下鉄や鉄道路線の延伸により、新しい住宅地が次々に開発されました。特にロンドン北西部の「メトロランド」は、郊外生活の象徴的な存在です。ピナー、ルイスリップ、スタンモア、ウェンブリー周辺などでは、庭付きのセミデタッチド住宅が広く供給されました。
この時代は、自動車の普及が住宅デザインにも影響し始めた時期でもあります。私道、ガレージ、前庭の配置などが新しい住宅の重要な要素になりました。また、家事の効率化、衛生意識、明るい室内、電気・ガス設備の普及など、日常生活の近代化も住宅の間取りや設備に反映されました。
一方で、商業建築や公共建築では、アール・デコやストリームライン・モダンの華やかなデザインが人気を集めました。映画館、リド、工場、ショールームなどは、幾何学模様、水平線、曲面、白い外壁、クローム装飾などを用い、近代的で楽観的な雰囲気を表現しました。
建築的特徴
外観
- セミデタッチド住宅。左右対称またはミラー反転の2戸一組が最も典型的
- ペブルダッシュまたは漆喰仕上げ。上階や全面に使われることが多い
- 下層レンガ+上層漆喰。レンガと明るい仕上げ材の組み合わせ
- モック・チューダーのハーフティンバリング。破風や上階に装飾的な木組みを見せる
- 1階のベイウィンドウ。角型、傾斜型、または丸みを帯びたものが多い
- スチール製ケースメント窓。鉛桟ガラスや小割りの窓も見られる
- 寄棟または切妻の瓦屋根。赤い粘土瓦がよく使われる
- 小さな玄関ポーチ。木製またはタイル付きのキャノピーを持つことが多い
- 私道とガレージ。自動車時代の始まりを示す重要な特徴
- 広めの裏庭。ヴィクトリアンやエドワーディアン住宅よりも生活空間として意識される
アール・デコ/モダニズム系の特徴
- 白いレンダー仕上げと陸屋根
- 曲面のコーナーや丸みを帯びた壁
- 水平方向を強調した窓
- クリッタル窓などのスチール窓
- ガラスブロックや丸窓
- 幾何学模様、水平帯、クローム装飾
- 映画館や工場に見られる装飾的なアール・デコ要素

住宅形式
戦間期住宅の代表は、3ベッドルームのセミデタッチド住宅です。典型的には、玄関ホール、フロント・レセプション、リア・レセプション、キッチン、3つの寝室、浴室、前庭、裏庭、私道またはガレージを持ちます。
ヴィクトリアン・テラスに比べると、敷地が広く、部屋も明るく、庭や車の利用を前提とした郊外型の生活に適しています。このため、現在でもファミリー向け住宅として高い需要があります。
インテリアと装飾
戦間期のインテリアは、伝統的な郊外住宅の趣味と、近代的なデザインへの関心が共存しています。
- タイル張りの暖炉。リビングやダイニングの中心的な装飾
- オーク風の梁。モック・チューダー住宅では、装飾的な梁が使われることがある
- 鉛桟窓とステンドグラス。玄関扉、階段窓、ベイウィンドウに見られる
- 寄木張りの床。玄関ホールやレセプションルームに使われることがある
- ピクチャーレール。壁面装飾や絵画のための水平レール
- 花柄や幾何学模様の壁紙。伝統的な柄とモダンな柄が混在
- 造作家具。収納や食器棚など、生活の効率化を意識した設備
- アール・デコの影響。クローム、鏡面ガラス、幾何学模様、曲線的な家具など


この時代には、キッチンも大きく変化しました。家事労働を効率化する「労働節約」の考え方が広まり、ガス・電気コンロ、掃除しやすい床材、造作収納、機能的な作業台が重視されました。
Kens Estateの視点では、戦間期住宅は、間取りの分かりやすさ、庭の広さ、拡張のしやすさが魅力です。一方で、窓、屋根、配管、断熱、電気設備などがどの程度更新されているかを確認することが重要です。
物件識別のポイント
戦間期物件の典型的特徴:
- ✓ 2戸一組のセミデタッチド住宅
- ✓ 1階のベイウィンドウ
- ✓ ペブルダッシュ、レンダー、または部分レンダー仕上げ
- ✓ 破風や上階のモック・チューダー装飾
- ✓ 赤い瓦の寄棟屋根
- ✓ 鉛桟またはスチール枠のケースメント窓
- ✓ 小さな玄関ポーチ
- ✓ 前庭、私道、ガレージ、広い裏庭
- ✓ 室内のタイル張り暖炉、ピクチャーレール、寄木張り床
混同されやすい時代: エドワーディアン、戦後住宅
戦間期住宅は、エドワーディアン住宅と戦後住宅の中間に位置するため、両方と混同されることがあります。エドワーディアン住宅よりも郊外型で、車や庭の利用を前提にした構成が目立ちます。戦後住宅よりも装飾が多く、屋根や窓、ポーチ、レンガの質感に温かみがあることが多いです。
アール・デコや初期モダニズム系の戦間期建築では、白い外壁、陸屋根、曲面、水平窓、ガラスブロックなどが識別ポイントになります。これらは一般的な1930年代セミとは異なりますが、同じ戦間期の重要な建築表現です。
代表的事例
戦間期様式は、ロンドン郊外の住宅地、田園郊外型の公営住宅、アール・デコ建築、初期モダニズム住宅などに幅広く見られます。
ロンドンで物件を見る場合、ハロー、ピナー、ルイスリップ、スタンモア、エッジウェア、キングズベリー、エルサムなどでは、戦間期のセミデタッチド住宅が多く見られます。こうした住宅は、現在でも家族向け住宅として人気があり、ロフトコンバージョン、リアエクステンション、サイドエクステンションなどによって現代的な住まいに改修されている例も多くあります。
住宅・都市住宅の代表例
- メトロランドの住宅地(ロンドン北西部、1920年代から1930年代)、郊外セミデタッチド住宅の代表例
- ピナー、ルイスリップ、スタンモア、ウェンブリー周辺の住宅地、地下鉄・鉄道沿線に広がった戦間期住宅地
- ベコンツリー・エステート(ダゲナム、1920年代以降)、大規模公営住宅地の代表例
- ワイゼンショウ(マンチェスター)、田園郊外型公営住宅地の例
- ハイ・アンド・オーバー(アマシャム、1929年)、初期モダニズム住宅の代表例
- ハイポイント・フラッツ(ハイゲート、1935年)、モダニズム集合住宅の代表例
公共建築・関連建築の代表例
- フーバー・ビルディング(ペリベール、ロンドン、1930年代)、アール・デコ工場建築の代表例
- デ・ラ・ワー・パビリオン(ベクスヒル・オン・シー、1935年)、モダニズム公共建築
- バターシー発電所(ロンドン、1929年着工)、戦間期の大規模産業建築
- オデオン系映画館(英国各地、1930年代)、アール・デコ映画館建築の代表例
- リドや海辺のレジャー施設(英国各地)、1930年代の健康・余暇文化を反映
掲載画像について
このページに掲載している画像は、建築様式や住まいの雰囲気を説明するための参考イメージです。当社で取り扱っている売買物件・賃貸物件の実際の写真、または特定の物件を示す画像ではありません。
その他の建築様式

ジョージアン Georgian
左右対称の外観と整然と並ぶ窓、高い天井が特徴。端正で均整の取れた英国住宅様式です。

リージェンシー Regency
白いスタッコ外壁や優雅な曲線、装飾的なバルコニーが特徴。ロンドンの上品な街並みを代表します。

ヴィクトリアン Victorian
レンガ造りの外壁、出窓、装飾的なディテールが特徴。現在も英国各地で多く見られる住宅です。

エドワーディアン Edwardian
明るく広い室内、大きな窓、広めの間口が特徴。ヴィクトリアン住宅より開放的な傾向があります。

戦後 Post-war
住宅不足への対応から大量に建てられた、簡素で機能的な住宅。戸建てから集合住宅まで幅広く見られます。

モダン Modern
装飾を抑えた外観、開放的な間取り、大きな窓が特徴。機能性を重視した住宅デザインです。

コンテンポラリー Contemporary
現代の素材や設備、環境性能を取り入れた住宅。時代に合わせて進化するデザインが特徴です。