イギリスの賃貸契約・更新・解約に影響する制度改正
Renters’ Rights Act(借主の権利に関する制度改正)は、2026年に向けて段階的に施行が進められており、「これまで通りでは通らない」ケースが少しずつ出始めています。
読む...イングランド賃貸物件オーナー様向け:実務に即した解説ガイド
最終更新:2026年1月
2025年10月、イギリスにおける民間賃貸制度に関する重要な法改正として、「Renters’ Rights Act 2025(賃借人の権利法2025)」が成立しました。
この法改正は、賃借人とオーナーの双方にとっての公平性および透明性を高めることを目的としており、これまで複雑だった賃貸制度を、より分かりやすく一貫性のある仕組みへと見直す内容となっています。
本法については、Section 21 に基づく「理由を示さずに行う立退き」の廃止が注目されがちですが、変更点はそれだけではありません。賃貸借契約の形態、明渡し(立退き)手続きのルール、家賃の取り扱い、物件に求められる最低基準、さらに家主に対する監督・規制の仕組みなど、民間賃貸を取り巻く制度全体にわたって幅広い見直しが行われています。
特に、海外在住でイングランドに賃貸物件を所有しているオーナー様にとっては、
を正しく理解しておくことが、資産価値の維持と法的リスクの回避の両面において非常に重要となります。
本ガイドでは、Renters’ Rights Act 2025 の主な内容を整理し、イングランドに賃貸物件を所有するオーナー様が実務上押さえておくべきポイントを、日本語で分かりやすく解説します。
Kens Estate は公式発表を継続的に監視し、各段階が確定次第、家主様に助言を行います。
Renters’ Rights Act 2025 の下では、確定期間を定めたアシュアード・テナンシー(定期借家的な契約形態)は廃止され、 アシュアード・ピリオディック・テナンシー(継続型の賃貸契約)へと一本化されます。 新たな契約形態では、契約は一定期間で自動的に終了するものではなく、いずれかの当事者が、法律に基づき適切な手続きを取らない限り継続します。
継続型契約の下では、賃借人および家主それぞれに、契約終了に関する明確なルールが定められます。 賃借人は、原則として2か月前の通知を行うことで、契約を終了することができます。 一方で、Section 21 に基づく「理由を示さずに行う立退き」は廃止されます。 オーナー様が契約終了(明渡し)を求めることができるのは、Section 8 に基づき、法律で定められた正当な理由がある場合に限られます。
各明渡し理由には、それぞれ定められた通知期間および証拠要件があり、 家主はこれらを満たしたうえで手続きを行う必要があります。
また、賃借人が通知後も自主的に退去しない場合には、従来どおり裁判所の関与を通じた手続きが必要となります。
Renters’ Rights Act 2025 の下では、家賃の改定に関して明確なルールが設けられます。 家主は、原則として家賃の改定を行えるのは年1回までとなります。
なお、これらのルールを正しく遵守したうえであれば、市場水準に基づいた合理的な家賃への改定は、引き続き可能です。
Kens Estate では、
について、イングランドの賃貸オーナー様に向けた実務サポートを提供しています。
Renters’ Rights Act 2025 の下では、賃借人にはペット飼育の許可を申請する権利が認められます。
オーナー様は、こうした申請に対し、以下の点を遵守する必要があります。
一律にペットを禁止する対応は認められず、個別の状況に応じた判断が求められます。
なお、介助動物(assistance animals)については、ペットとは異なる扱いとされ、常に認める必要があります。
オーナー様および仲介業者は、入居希望者に対し、以下の理由のみをもって入居を拒否してはなりません。
一方で、以下の審査については、客観的かつ一貫した基準に基づいて行われる限り、引き続き合法とされています。
本法により、新たな義務的監督制度が導入されます。
登録は、物件を市場に出すための前提条件です。 オンブズマンは、拘束力のある紛争解決および家主向けの指針を提供します。
Kens Estate では、
について、イングランドに賃貸所有するオーナー様を継続的にサポートしています。
Renters’ Rights Act 2025 により、これまで対象外であった多くの民間賃貸住宅にも、最低居住基準が適用されます。 この最低基準は、**ディーセント・ホームズ・スタンダード(Decent Homes Standard)**として定められています。
この基準の下では、賃貸物件は以下の状態を満たす必要があります。
これは新たに高い水準を求めるものではなく、民間賃貸住宅において最低限確保すべき居住環境を明確にしたものと位置づけられます。
本法の施行により、健康被害につながる深刻な不具合への対応義務が、Awaab’s Law として民間賃貸セクターにも拡大適用されます。
これにより、例えば以下のような問題が確認された場合には、
について、調査・是正を行うまでの期限や、家主に求められる対応水準が明確に定められることになります。 家主には、問題が判明した際に、速やかかつ適切に対応する体制が求められます。
これにより、物件基準の遵守は、単なる努力義務ではなく、実務上も明確に求められる要件となります。
オーナー様には、物件の状態を継続的に把握し、問題が生じた場合に適切に対応することが求められます。 海外在住の場合、ご自身での対応が難しいケースもあります。 Kens Estate では、物件維持に関するご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
法改正後の賃貸運用において求められる実務体制
Renters’ Rights Act 2025 をはじめとする法改正により、 賃貸物件のオーナー様には、制度を理解するだけでなく、 それを日常の賃貸運用の中で継続的に実行できる体制が求められます。
法令に基づく通知や手続き、物件状況の把握と記録、 賃借人からの要請への対応、登録制度やオムブズマン制度への対応などは、 いずれも単発ではなく、継続的な実務として発生します。
これらを個人で対応する場合、 法改正や制度変更の把握が追いつかなくなったり、 対応の遅れや判断ミスが、結果として運用上のリスクにつながることもあります。 特に、遠隔での管理や、実務を一人で担っている場合には、 負担やリスクが可視化されにくい傾向があります。
Kens Estate では、イングランドの賃貸実務に精通した現地スタッフが、 法改正を踏まえた賃貸運用における実務体制づくりを支援しています。 オーナー様の管理状況や運用方針に応じて、 実務負担の軽減とリスク管理を意識した、現実的な対応を行っています。
すべての規定が直ちに施行されるわけではなく、施行は段階的に行われます。 政府から施行開始スケジュールが別途公表され、主要規定の施行前に家主への事前通知が行われます。
Section 21(無過失立退き)は廃止され、家主は Section 8 に基づく「法律で定められた正当な理由」がある場合にのみ明渡しを求めます。 賃借人が自主的に退去しない場合、裁判所の関与が引き続き必要です。
原則として年1回までです。Section 13 の法定手続きを遵守し、少なくとも2か月前通知が必要です。
物件は固定の募集家賃で広告しなければならず、広告額を上回るオファーを求めたり受け取ったりしてはなりません。 家賃入札行為は禁止です。
家主は申請を合理的に検討し、所定の期間内に回答する必要があります。 拒否する場合は、契約条件や物件の適合性などに基づく正当な理由が求められます。
家主および仲介業者は、子どもがいること、公的給付を受給していることを理由に入居希望者を拒否してはなりません。
違反した場合、最大7,000ポンドの民事罰、家賃返還命令、明渡し権の制限などの制裁が科される可能性があります。
ディーセント・ホームズ・スタンダードにより、湿気やカビなどの重大な危険がない状態であることが求められます。 また Awaab’s Law の拡大適用により、深刻な危険が判明した場合の調査・是正の期限と期待水準が明確化されます。
正確な通知手続き、記録・書類管理、賃借人からの要請への迅速対応、登録・オンブズマン加入義務、施行日の継続確認が重要です。
法改正の解釈、契約・手続の法令遵守維持、規制に沿った物件管理、現地代理対応、リスク軽減まで支援します。
本ページは、2026年1月時点の情報に基づいています。 Renters’ Rights Act 2025 の一部規定は、施行規則および政府の追加ガイダンスに従って開始されます。
Kens Estate は、施行の進捗に応じて、引き続き家主様の皆様へ最新情報を提供します。